Doctoral Program in Film and New Media Studies

校舎風景

実践的な知の構築

本研究科における博士課程では,「つくる」という知見と経験を重視しながら,新たな「実践的な知」を構築してゆきます。映像メディアにおける言語と文法を研究し,この新しい分野の体系化に寄与することを目的としています。

現在,芸術表現分野における博士のあり方は,世界的な議論となっています。特にEU統合下のヨーロッパ各国においては,各大学間の相互交流をスムーズに行うために,年限や学位等の基準作りが進みつつあり,芸術表現分野では,実践を前提とした博士のあり方が実現されつつあります。博士課程においては,当然,理論の構築を目的とした研究が求められるわけですが,芸術分野においては理論の構築以前に,表現が作品として実現されておらねばならず,まずそこに至る実践が求められます。その上で,作家として,作品として,文化芸術として歴史の中での位置づけが必要となり,過去の理論との関係性において,その作品が理論的に論じられなくてはならないのです。

創造的行為の理論化

映画映像産業の発展に比べて,これまで我が国には国立の映画学校が存在しなかったために,映画映像の研究は大きく立ち後れてしまいました。映画理論,映画史という観客の立場に立った研究ではなく,作り手の側に立った理論研究は皆無に近かったと言っても過言ではないでしょう。また,これだけ多くの映像関連機材を製造している企業が我が国には多く存在しているにもかかわらず,映画映像の見方,利用の仕方を研究し,広めるという活動がなされてはきませんでした。こうした映像リテラシーの遅れもまた,致命的とも言えるものです。

具体的には,修士課程における実制作を中心としたカリキュラムと連動させながら,そうした現場における実践を俯瞰分析し,芸術という人間の創造的行為の理論化を行っています。

映画映像という分野は,フィルムやテープあるいはデジタルという,複製を可能にするメディア技術の上に成り立っている芸術であり,創作の過程を振り返ることが比較的容易であるという利点を持っていると考えられます。また,映画等は集団による製作であり,創造的な行為の集合によって生まれる芸術であり,個人の内的な創造性とは異なった場面にその創造性の発露があると考えます。

創作された作品そのものの研究と同時に,こうした具体的な表現を支えているカメラやデジタル編集などのメディア技術の進化も見逃すことはできません。こうした技術の過去から現在へ至る変遷を辿る研究と同時に,新しい表現を可能にする新しいメディア技術の開発研究も,その視野に入れています。