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作品解説 ― 映画監督 筒井武文

A JUMONJI KANAKO FILM
 「セジと少年合唱団」   HD / 71min.
「セジと少年合唱団」
「セジと少年合唱団」
「セジと少年合唱団」
STORY
東京の教科書の出版社に務める成司。幼少期に両親が離婚し、故郷に父親を残し都内で過ごしていた。しかし上司から東北営業を命じられ、30年振りに父親・喜治郎との生活が始まる。蟠りを残したままの日々が続くが、近所の子ども達との出会いなどで次第に心を許しはじめる成司。そんな中営業に出向いた小学校で知った『星めぐりツアー』をきっかけにして、父と子の距離は急速に縮まる。そして一つの記憶が呼び起こされる。
COMMENTARY
この一見、心温まるような題材で、十文字香菜子が挑むのは、30年間、別れて暮らした親子の深いわだかまりが解決可能かという問である。その鍵を握る父親から離婚した母に宛てた手紙の内容は観客に明かさないまま、主人公たる成司は東京から故郷の岩手に送り込まれる。その実行犯は、出版社の同僚であり同棲中の恋人の頼子である。十文字にとっての岩手は、ベルトルッチのパルマがそうであったように、主人公に武装解除させながら、父親の血をひく存在である自己を再認識させる場所である。十文字は、父と母の回想シーンで軽やかに映画と戯れるが、その関係が自身と恋人の関係に横滑りしたときの難しさに直面しもする。のっぴきならない故郷の風景が主人公に迫ってくる瞬間に響いてくるものに勝負が賭けられるが、それを映画の奇蹟と呼ぶべきだろうか。
STAFF
監督・脚本: 十文字香菜子
撮影監督: 青木 穣   録音・整音: 小西真之
美術: 小山宏志   編集: 大川景子   音楽: 余田有希子
助監督: 倉光哲司   製作: 真貝陽子
CAST
出演: 島守杏介   姉帯忠正   中村真生   菅原光樹   藤 一平
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A TOYAMA TOMOKO FILM
 「よるのくちぶえ」   HD / 119min.
「よるのくちぶえ」
「よるのくちぶえ」
「よるのくちぶえ」
STORY
真山クロシは14歳。母・波子と二人暮らし。クロシがこの町にやって来たのは、まだ0歳の時。でもクロシは全部覚えている。母に抱かれバスに乗ったこと、老女に言葉をもらったこと、詩人との出会い・・・。誕生日も近いある日の夜、突然“父”が現れる。その言い分とは「15歳になるまでは波子と、15歳になってからは僕がクロシと暮らす約束になっていた」というものだった。クロシ、家族、周囲の人々、すべてが少しずつ変化し始める。
COMMENTARY
ご存じの方もいるだろうが、遠山智子は天才である。約十年前に撮った処女作(『集い』)から一貫して、映画文法に捉われない映像の飛躍が持ち味であった。実験映画ならそれで充分だったであろうが、説話性があるだけに、難解との評を呼んだ憾みもある。ところが、彼女はここで少年の成長譚としての大河映画へと足を踏み入れた。母と暮らす15歳のクロシの前に、父が過去の約束を果たしに現れる。代わりに母とは別れねばならない不条理に晒されるクロシ。陰影を強調した画面は遠山独自の世界であり、カットが積み重なる度に驚きは更新される。心理的な説明は排しながら、登場人物の佇まいが染み入るように伝わってくる不思議。彼女に新たに加わったものは、黒沢清をして小津の『晩春』を思わせると言わしめた、少女と母の対話シーンに見られる情感なのである。
STAFF
監督: 遠山智子
脚本: 澤井香織   製作: 五十嵐真志   撮影・照明: 八尋宗一朗
録音: 上條慎太郎   美術: 瀬川 烈   助監督: 川崎大輔・宮本 亮
編集: 平田竜馬   音楽: 余田有希子
CAST
出演: 泉澤祐希   片岡礼子   品川 徹   長谷川朝晴   韓 英恵
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A NISHINO MAI FILM
 「死んだらゲームをすればいい」   HD / 108min.
「死んだらゲームをすればいい」
「死んだらゲームをすればいい」
「死んだらゲームをすればいい」
STORY
東京の小さな専門学校で働く佐々木一郎・35歳。仕事も彼自身も全く冴えないけれど、幼い娘とそれなりに仲睦まじく生活している。ある日彼の元に一本の電話がかかってくる。同僚の突然の死。一郎はショックを受ける。それと同じくして別居中の妻からの言葉が彼の心を突き刺す。「あなたは何も見てない」夜道、一郎はふと思い立つ。“あの場所”へ行こう。幼い娘の手を取り一郎は歩き出す。平凡な親子のちょっと奇妙な物語。
COMMENTARY
恐るべき怪作である。これを見たら、作者の頭の中がどうなっているのか知りたくなるのが請け合いである。妻と別居し、幼い一人娘と暮らす専門学校事務職員佐々木一郎を北村有起哉が世の中にこれ程幸薄い人はいないだろうと思わせる好演を見せる。同僚の死がきっかけで、娘を連れて鄙びた宿に泊まるのだが、そこでふたりの周りに起きる奇妙な出来事の数々。変に悟ったようなトランプ狂の老人(三谷昇!)との出会いに始まり、現世と来世を行き来するような捩くれた時空が漂いだすのだが、それを語る話法もノンシャランに逸脱に逸脱を重ねていく。主人公が悲惨の極致に至ることで、救いも見えてくるのではあるが…。これは、ブニュエルか、つげ義春かと頭を悩ませるのだが、西野真伊はまったく他人から影響を受けてないらしい。次回作が見てみたい。
STAFF
監督・脚本: 西野真伊
撮影監督: 後閑健太   録音: 松浦大樹
美術: 保泉綾子   助監督: 崎田憲一
製作: 宮武令衣・本田元治・高橋博紀   編集: 徳田津奈子
CAST
出演: 北村有起哉   木村彩由実   三坂知絵子   玄覺悠子   三谷 昇
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A NOHARA TADASHI FILM
 「Elephant Love」   HD / 101min.
「Elephant Love」
「Elephant Love」
「Elephant Love」
STORY
1人の男と4人の女の物語。幼なじみの千恵と離婚してから数年、千葉智明は現在、気ままなシングルライフを謳歌している。智明は、年下の彩乃、そして年上の真紀子と同時に関係を持っている。そんな智明の前に消息不明だった従姉の愛子が現れる。実は愛子こそが智明の初恋の女性であった・・・。ゆがんだ、しかし一途な愛を描いた恋愛悲喜劇。
COMMENTARY
ルノワールなら一対三になるところだが、野原位では男を四人の魅力的な女性が取り囲む。内田亜希子と目黒真希の間を往復し、元妻の竹花梓とも友達付き合いする、いしだ壱成のプライベートを垣間見せるような芝居が絶品だが、初恋の歌姫の登場によって事態は錯綜していく。辻香緒里演じる歌姫登場シーンでは、キャメラまで彼女に欲情しているのが感動的だ。そして壱成に加えられる罰の重さときたら・・・。ここで(73分40秒)終わっていたら、ロメールに比すべき、コント・モラルの大傑作として充分に観客を唸らせたであろうが、野原は自己の映画的欲望に忠実に、リアリズムから大胆に離脱してみせる。時間が止まったような図書館の館長室が後半への伏線だったのだ。まるで世界の終わりを描くがごとき、その骨太なタッチはとても新人のものとは思えない。必見!
STAFF
監督: 野原 位
脚本: 高木幹也   撮影・照明: 八尋宗一朗
美術: 原 尚子   録音: 松浦大樹   編集: 木村恵子
制作: 横手三佐子   助監督: 本田元治
CAST
出演: いしだ壱成   内田亜希子   目黒真希   竹花 梓   辻香緒里
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A MARIKO TETSUYA FILM
 「イエローキッド」    HD / 111min.
「イエローキッド」
「イエローキッド」
「イエローキッド」
STORY
田村は祖母と二人で暮らしている。仕事もクビになり、通っているボクシングジムの友人とともに当たり屋などを過ごしている。漫画家の服部は高校時代の馴染みで元ボクシング世界チャンピオンの三国を取材するため、ボクシングジムへ訪れる。以前から服部の漫画に思い入れのあった田村は服部の存在が気にかかる。ある日、服部が田村をモデルに漫画のキャラクターを描いたことから、田村は日常を変化させようと行動し始める・・・。
COMMENTARY
芸大入学前から充分にキャリアを積み重ねてきた真利子哲也が、自己の総決算として一世一代の大勝負に打って出た作品である。ボクサー志望の田村(遠藤要)と「イエローキッド」を題材に取った漫画家服部(岩瀬亮)を軸に展開するのだが、一時も眼を離すのを許さない凝縮した持続があまりにも見事である。キャスティングも完璧。二階の自室の窓から芯が剥き出た電線を握り締める田村の姿にはじまり、胸を打つディテールが頻出する。彼を苛める先輩のいるボクシングジムの描写も緻密だし、元世界チャンピオンと同棲する元彼女のアパートに侵入する服部の屈折した心情にも泣けてくる。服部が田村をモデルに「イエローキッド」の続篇を描き出し、漫画の世界が同時進行していくポップな魅力も炸裂する。現時点での芸大作品中の最高作といっていいだろう。
STAFF
監督・脚本: 真利子哲也
撮影監督: 青木 穣   録音: 金地宏晃   美術: 保泉綾子
漫画: 大脇勇亮・川崎秀和   音楽: 鈴木宏志・大口俊輔
編集: 平田竜馬   製作: 原 尭志
CAST
出演: 遠藤 要   岩瀬 亮   町田マリー   波岡一喜   玉井英棋
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