
東京の教科書の出版社に務める成司。幼少期に両親が離婚し、故郷に父親を残し都内で過ごしていた。しかし上司から東北営業を命じられ、30年振りに父親・喜治郎との生活が始まる。蟠りを残したままの日々が続くが、近所の子ども達との出会いなどで次第に心を許しはじめる成司。そんな中営業に出向いた小学校で知った『星めぐりツアー』をきっかけにして、父と子の距離は急速に縮まる。そして一つの記憶が呼び起こされる。

この一見、心温まるような題材で、十文字香菜子が挑むのは、30年間、別れて暮らした親子の深いわだかまりが解決可能かという問である。その鍵を握る父親から離婚した母に宛てた手紙の内容は観客に明かさないまま、主人公たる成司は東京から故郷の岩手に送り込まれる。その実行犯は、出版社の同僚であり同棲中の恋人の頼子である。十文字にとっての岩手は、ベルトルッチのパルマがそうであったように、主人公に武装解除させながら、父親の血をひく存在である自己を再認識させる場所である。十文字は、父と母の回想シーンで軽やかに映画と戯れるが、その関係が自身と恋人の関係に横滑りしたときの難しさに直面しもする。のっぴきならない故郷の風景が主人公に迫ってくる瞬間に響いてくるものに勝負が賭けられるが、それを映画の奇蹟と呼ぶべきだろうか。

監督・脚本: 十文字香菜子
撮影監督: 青木 穣 録音・整音: 小西真之
美術: 小山宏志 編集: 大川景子 音楽: 余田有希子
助監督: 倉光哲司 製作: 真貝陽子

出演: 島守杏介 姉帯忠正 中村真生 菅原光樹 藤 一平































