「第4回ポケットフィルム・フェスティバル in フランス」レポート

藤幡正樹(ポケットフィルム・フェスティバルinジャパン実行委員長)

 今年で第4回目となるフランス版「ポケットフィルム・フェスティバル」は、6月13,14,15日に、昨年に続いてパリのポンピドゥー・センターで開催された。これはパリ市立フォーラム・ド・イマージュ自体の改装が遅れに遅れているためであるが、今年暮れの12月には、新装されたフォーラムが本来の場所であるレ・アールの一角に再登場するそうである。今回のフェスティバルから、フランスでもモバイル・ディスプレイ部門が新設されたが、昨年の日本でのレギュレーションと異なっていたのは、モバイル・ディスプレイで見るための作品ということで、必ずしも携帯電話のカメラで作った作品でなくて良いというカテゴリーであった。

 さすがに、早くからはじめたフェスティバルだけあって、類似のフェスティバルからの作品や参加者も多く、携帯電話やデジタルカメラという、モバイル機器を用いた映画への感心が世界的に拡がりつつあることを実感することができた。その一端は、女優のイザベラ・ロッセリーニが、サンダンス・インスティテュートからの依頼で製作した小型ディスプレイ向けに作った新作の紹介であった。「Green Porno(グリーン・ポルノ)」と題された作品は、虫たちのセックスについて、着ぐるみを着てカマキリや蝿に扮したイザベラが、時にシリアスに、時にユーモラスに虫たちの世界を語る1分〜2分程度の短い作品(計8本)である。当然のことだが、これがマスコミの話題となったことで、多くのプレスが訪れていた。また、アルテ(ARTE)というヨーロッパ最大の文化チャンネルが、「Mes 20 ans(二十歳の頃)」というテーマで10人の映画監督に携帯電話のカメラで撮影した作品の製作依頼をし、完成した11本の短編劇映画が上映された。プロの監督たちに対して、携帯で作品を作ることの意義について考えさせることで、これまでの映画制作手法とは異なった可能性を引き出すことに意図があったのだと思われるが、実際の作品がそれに答えていたかどうかについては、議論は別れるだろう。しかしながら、これらの企画は、ともにフェスティバル側からの持ち込みではなかったということで、商業的な映像組織の内部からも携帯カメラ映像への実験的な取り組みが出てきたことが実感できた。

 こうした商業的な映像製作とは別の側面での意義も強調されていた。それは、アフリカのコンゴのキンシャサで行われたワークショップで作られた作品群であり、携帯映像の可能性を有効活用して、外側からの視点ではとらえることのできない、現場の内側からの映像をとらえることに成功していたと思われる。具体的には、国連が常駐するような政治的に不安定な街の中が撮影された作品で、プロでは決して撮ることのできない世界が撮影されていた。これはプライベート・ジャーナリズムとでも呼ばれるべき分野であり、こうした方法をとると、撮影を拒否しているその主体の内側からも映像を送り出すことが、可能であることが示唆されていた。

 また、携帯カメラのこうした可能性に気づいている東欧のTVディレクターにも会うことができた。彼は、ポーランドで自由投稿サイトを運営しているのだが、ここ数年自ら各地でワークショップを行うことで、いつでもどこでも自由に、自分の映像を他者に見せることができること、またその方法について伝授を行っている。そうした活動の成果としてすでに300人以上の参加者がこのサイトにいるのだそうである。このサイトのすごさは、言葉による意見の強要がそこには無いということである。事実を自分の携帯カメラで記録し、それをサイトを通して他者にも配信することで、その事実についての判断は見る者がすれば良いという立場である。
http://www.miastowkomie.pl/