Interview 映画制作技術分野の修了生たち

映画はひとりでつくることができない。さまざまなプロフェッショナルなスタッフの力を結集して実現されるもの。撮影、美術、録音、編集といった仕事からみえてくるリアルな現場と映画との向き合い方を聞いた(2010年10月)。

映画的瞬間を編む

インタビュー:大川景子(編集領域修了)

おおかわけいこ:1978年生まれ。石川県生まれ。『ユキとニナ』諏訪敦彦監督(2010)に編集アシスタントとして参加。短編映画『黒髪』諏訪敦彦監督(2010)『ひとつの歌』杉田協士(2011公開)に編集でたずさわる。現在、諏訪久子さんと編集ユニット「こまとりシスターズ」を結成し、仕事募集中。

映画に関わり続けるために

大学で映画を学んだ大川景子さんは、卒業当初はアルバイトをしながらひとりで映画は撮れると考えたいた。「いま振り返ると、本当になんにもわかっていなかったですね」と、その時期のことを若気の至りと振り返る。アルバイトはしてみたものの、1本も映画が撮れないまま、無為に1年が過ぎ、このままではいけないと映画美学校のドキュメンタリー・コースに入学した。
テレビの仕事をしながら、映画製作を再開。しかしまた失敗を繰り返す。「ひとりで監督、撮影、編集をこなそうとして、どうにもならなかったですね。やっとひとりじゃ映画はつくれないということに気がつきました」と苦笑する。

画面の外の世界観をつくる

なぜ編集領域に進学したのかという問いに、大川さんは、自分の資質を見定めたことをその理由に挙げる。
「監督とか脚本は、自分のイマジネーションを形にしていく仕事。最初はもちろんそこに憧れました。しかし私の場合は、すでにこの世の中に存在していて、映ってしまったものをどうするのかということにこだわっていきたいと考えるタイプなんですね。ドキュメンタリーを撮っているときに、とにかく撮影しちゃった素材からひたすら考えることに興味をもって、そこから編集という技術を自分の確固たるものにしていきたいと思いました」。
映像研究科では、これまでとは異なり、領域毎に仕事の分担がはっきりとあり、大川さんも監督の意図に応えるように各領域のスタッフの中で編集技術を着実に実践した。それぞれの立場から意見を交換し、議論を交える現場はひとりでなんでもやろうとしてきた大川さんには貴重な機会となった。
一方、映像研究科在学中から、諏訪敦彦監督の作品で編集アシスタントを務め、現在もその独特な方法論からは大きな刺激をうけているという。「自分の頭で考えていること以上に、生身の俳優や現場がつくりだす、“そこにある空気”を大事に活かすことに興味をもっています。監督、撮影、録音、編集というようなそれぞれの立場を超えたスタッフ間の対等なディスカッションがあって、そこに携わる充実感を持っています。非常にラッキーなことだと思っています」。

映画的瞬間を編む
映画という駆け引きを楽しむ

大川さんは、諏訪監督の作品の編集アシスタントと並行して、テレビなどの仕事もこなしている。
「テレビの仕事は、主に生活のためにやっているわけですが、これはきれいに繋ぐ編集というか、早くわかりやすくまとめる技術が求められます。
映画の場合、諏訪監督の仕事だと、脚本もカット割も完璧にきまっているものはないので、編集作業がブロックを組み立てるようなことになります。この作業は、撮影された素材が訴えてくるものをじっくり“聴く”ということにつきるような気がします。それからディスカッションです」。
ディスカッションで作られていく映画のワークフローについて説明を求めると、「言葉で説明し難いのですが、スタッフの誰が見ても、確実に映画的な素材になる瞬間があるんですね。“このカットきてる”みたいなところ。そういう場面をピックアップして構成していくわけです。いままで考えられていた作家性とは違う方法論があるんですね。“そこにある空気”を活かす編集ということだと思います。幸いなことに、最近はそういう方法論を持った人との仕事の機会が多いです。たまたまなのかもしれませんが、ワークフローも変わってきている気がしますね」。
かつてひとりで映画をつくろうとした大川さんだが、その失敗を糧に、編集と向き合い、プロフェッショナルな人々との出会いを活かして、新しい映画作りを探求している。。
(2010年10月)